
セブンウインドウズに新しいダイヤル ”雪平” が誕生しました
2025年3月17日
セブンウインドウズに新しいダイヤル ”雪平” が誕生しました
2025年3月17日#8.URUGAの秘話

「URUGAという名前だけが先に決まり、そこからケースの構造を考えていきました。麗(うるわ)しく、雅(みやび)なるものをコンセプトに日本固有の美しさを形にしてみたかったのです。」鈴木社長は、URUGAのケースパーツを組み上げながらこっそり教えてくれました。
こんなリクエストを受けたウォッチデザイナーは、おそらく麗しさや雅とは何か、哲学的に掘り下げていったのではないかと想像してしまいます。

その後を追いかけるように調べてみました。
麗しさの語源は、古代の潤ふ(うるう)に由来します。水に濡れてつやつやと光沢のある冷たい感じの美しさを表すイメージからきているそうです。偶然かも知れませんが、URUGAのファーストコレクションの文字盤は水瀬川の水面が表現されたのはそんな理由だったのかもしれません。
一方、雅という言葉を調べていくと三島由紀夫に辿りつきます。雅の源流は天皇にあり、宮廷文化の精華への民衆のあこがれであったと著書の中で述べています。三島によれば、わび、さびの文化も雅から派生したと位置付けています。一般人には難解な解釈ですが、雅の目線でURUGAの細部を眺めると、インデックスが斜めにカッティングされていることに気づきます。着物の合わせをイメージしたデザインという話は聞いていたのですが、三島の文献を読んだ後は平安貴族の装束が思い浮かびます。
これらの想像は、個人的な妄想に近いのですが、デザイナーが込めたメタファーを探求するのは楽しい作業です。

ちなみにMINASEではURUGAのケースコンセプトは、文字盤を宝石に見立てて、立て爪のセッティングを施したクランピング構造を採用しています。ケースとベゼルを4つのタブでクランピングするという構造は革新的であり、切削と磨きの高い技術を誇るMINASEの真骨頂ですが、そこにもデザイナーの隠された意図があるのかもしれません。源氏物語や枕草子の中に宝石なるものは登場するのだろうか?
MINASEウォッチは独創的であるが故に妄想をふくらませたくなります。


ファクトリーライターのK.カワカミ氏による、こだわり発見レポート「ミナセ探訪」。
時計業界を熟知した鋭い視点から、ミナセの価値に迫ります。
ライター:K.カワカミ
ファクトリー探検ライターとして、国内外のモノづくりを取材。時計、電気製品、靴、ファッション、建築、食品、菓子、伝統工藝など、こだわりの作り手のもとを訪れる。