それは一通のメールが始まりでした。秋田新幹線の車内で受信したメールの文面は、鈴木社長の心にどこかピンとくるものがあったそうです。(ミナセの将来を左右する重要な出来事は秋田新幹線の中で起きることが多いようです)。
海外での取扱いを希望する申し出はこれまでに何度かあったものの、いつも慎重に対応してきた鈴木社長でしたが、ジャックさんのメールの文面から誠実そうな人柄が伝わってきたと言います。
その後、リモート会議を重ね、ジャックさんが世界的な有名ジュエラーのN.Y.店の時計仕入れ部門のマネージャーであり、同時に自らの祖父が創業したジュエリーショップをN.Y.近郊のニュージャージーを営んでいることが判明し、自分の経営する会社を起点にしてミナセを北米に紹介したいという話に進展したそうです。
そこでジャックさんと鈴木社長が日本で初顔合わせをするタイミングで、ファクトリーに向かう車に同席させてもらい、ジャックさんを質問攻めにしました。
ジャックさんは3歳から空手を学び、日本文化が好きだったこと。彼自身がジュエリーの制作者であり、ミナセの時計ケースのアングルや構造の難しさが自分ごととして理解できたこと、昨年、銀座の百貨店でミナセに初めて出会い、日本の時計はビッグブランドが最高峰だという認識を改めたこと。自身の想いをたくさん語ってくれました。
その中で一番印象に残ったのは、Family Heritageというワードです。工具メーカーに端を発し、父から息子へ受け継がれているブランドヒストリーがあり、家族が紡ぐLegacyによってブランド価値が薄まることなく磨かれていくことに魅力を感じるのだと力説していました。
ファクトリー見学を終えて「どうだった?」と聞くと、「小さな部品まで、本当にここで作っているんだね」。「雪に包まれたこの風景から生まれる価値を時計ファンに伝えていきたい、だから北米でもストーリーを語ることができるお店に絞って展開すべきだと思う」。帰りの駅の待合室でも鈴木社長とジャックさんの会話は延々と続きます。
そして2026年6月N.Y.でPOP UPを開催することが決定し、固い握手をしてジャックさんは帰路に着きました。
ファクトリーライターのK.カワカミ氏による、こだわり発見レポート「ミナセ探訪」。
時計業界を熟知した鋭い視点から、ミナセの価値に迫ります。
- ライター:K.カワカミ
ファクトリー探検ライターとして、国内外のモノづくりを取材。時計、電気製品、靴、ファッション、建築、食品、菓子、伝統工藝など、こだわりの作り手のもとを訪れる。






